featuring

一枚一枚の紙に職人が想いを込める。
人気写真家 アーウィン・ウォン(Irwin Wong)氏が見た、
活版印刷の世界

日本の職人を撮ることをライフワークとし、たびたび岐阜を訪れている、アーウィン・ウォンさん。
これまで、長良川鵜飼の鵜匠や、岐阜和傘の張り師郡上の下駄職人郡上本染職人美濃手漉き和紙職人関の刀匠岐阜舞妓の写真をご紹介しました。

香港出身のアーウィンさん。彼の写真は陰影が印象的で、力強い世界観をもっています。
このコーナーでは、男性職人が多く登場してきましたが、アーウィンさんは女性職人も撮影しています。

今回ご紹介するのは、岐阜市の活版印刷職人を撮影した作品です。

時間をかけて作り上げる、活版印刷の魅力

今回アーウィンさんが出会ったのは、岐阜県岐阜市にある
ORGAN活版印刷室の職人、直野香文(なおのかふみ)さん。
活版印刷では一般的に洋紙を使うことが多いなか、ここではこの土地ならではの美濃和紙を使うチャレンジをしています。
柔らかい和紙にあらわれる文字のかすかな沈みこみは、指でなぞりたくなる優しい風合いです。

活版印刷では、10万個以上にも及ぶ「活字(かつじ)」から
文字をひとつひとつ探して組み合わせ、版を作ります。
版を手動活版印刷機にセットしてインクをのせ、一枚一枚、手作業で刷っていくと、
ガシャンというレトロな機械音とともに、紙に凹凸の文字が浮き上がります。
パソコンで手軽に文字を打ち印刷するのが当たり前の現代では、
活版で時間をかけて作られた印刷物が新鮮で温かく感じられます。

直野さんが活版職人を始めたのは、2009年。
持ち前のセンスを活かして名刺や結婚式の案内状などの注文を受けたり、
オリジナルの雑貨制作をしたりしています。また、活版印刷が体験できるワークショップでは、明るい直野さんの性格でいつも笑いが絶えません。

直野さんの、活字を拾う柔らかな表情。
一枚一枚の紙を丁寧に刷る動作。

直野さんが活版印刷の魅力に惹き込まれ、愛情を注ぐさまが、
言葉はなくてもアーウィンさんの写真から伝わってくるようです。

 

<写真家アーウィン・ウォン(Irwin Wong) 人物紹介>
香港生まれ、オーストラリア育ちで、現在は東京を拠点に活躍。
アエラ、フォーブス、ワシントンポストなど、世界20か国以上の雑誌で活躍する写真家。
俳優や建築家、あらゆる業界の大物を写真におさめています。
光を強く意識して人物を撮影することに定評のある彼が、ライフワークとして撮っているのが「日本の職人」シリーズ。
鵜匠を日本のアルチザン(職人)として撮影するため、岐阜を何度も訪れています。
型にはまらない独自の世界観と色彩感覚が魅力。口数は少ないが笑顔がチャーミング。

アーウィン・ウォン  / Irwin Wong
公式サイト
Instagram

─── 写真家アーウィン・ウォン その他の記事 ───