SNSを賑わす、2人の石アーティスト。
その隠れたこだわりがすごかった!
いしお先生の描きおろし漫画つき。
↑ 写真左:石田意志雄さん(漫画家、イラストレーター)/ 右:石花江雪さん(ロックバランシング アーティスト)
川にも山にも無数にころがっている石が、
石遊びのプロにかかれば、
Instagramをざわつかせるアートに!
岐阜市在住のアーティスト、
石花 江雪さん(ロックバランシング アーティスト)と
石田 意志雄さん(漫画家、イラストレーター)に
石遊びの極意を伺いました。
これを読めば、これからの行楽シーズンに、
あなたも「石アート」にチャレンジしてみたくなるかもしれません。
石のバランスもさることながら、写真の静かな美しさが圧倒的。
石花江雪さんのロックバランシング。
まずはお2人のご紹介から。
石花 江雪さんのInstagramがこちら。
長良川の石を積み上げた「ロックバランシング」(日本では「石花」とも呼ぶ)が、川べりの美しい風景とともにほぼ毎日アップされています。もちろん、接着剤も何も使っていません。ほんの小さな風でも倒れてしまうほどの繊細なバランスで立っています。
ロックバランシングを楽しんでいる人は世界にたくさんいますが、石花江雪さんの作品は、デザインに1つとして同じものがなく、石と風景の色が鮮やかで、禅寺の庭にも似た静けさと美しさが圧巻です。
自身を石のキャラクターにした4コマ漫画をほぼ毎日発信。
山の石をペイントした脱力系グッズも、あちこちにじわじわ拡散中!
一方、石田 意志雄さんのInstagram がこちら。
…といった、地元密着系漫画のほかに、
Note 長編連載「意志雄がゆく」で、無職漫画家父さんの日々を描いていたり……
石にキャラクターをペイントした人形ならぬ「石形」をイベント販売したりしています。
(岐阜のおしゃれなお店のレジ付近に、かなりの確率でこの石形が隠れていること多し!)
夢のビッグ対談、スタート!
- 石花江雪さん(以下、江雪) みなさんがいらっしゃる2時間前に来て、2つ積んでおきました。
- 編集 奥村(以下、編) わわわ! 実物はもっと迫力がありますね!
- 石田意志雄さん(以下、いしお) 思ってたより大きい!
- 江雪
- 川原の草がほんの少しゆれるくらいの風でも倒れてしまうのでね。まずは倒れないうちに見ていただこうと思いまして。
- ── 編
- 無重力みたいな不思議なバランスですけど、ぴくりとも動かないから、そんな壊れやすいようには見えないです!
- いしお
- いやぁ、僕も遊びでロックバランシングやったことありますけど、すごいなぁ、レベルが違う!
- ── 編
- Instagramの写真はほんとにきれいですもんね!石を濡らして石の色を際立たせていますよね。独学でこういう工夫をされているんですか?
- 江雪
- アメリカにMichael Grabさんというロックバランシングの第一人者がいて、その人の写真を見たら石が濡らしてあったので参考にしました。水をかけると、石が思いがけない色をしているのを発見して、楽しいですね。
Instagramは、娘が設定してくれたのではじめたんですけど、いいねの数とか気にしたことはなくて、自分が楽しいから作っていますね。いいねの数を気にしてたら、つまんなくなっちゃうと思うんです。日本にも「石花会」という愛好会があるので、色々な人の作品を見ますよ。
- ── 編
- ところで、いしお先生の石グッズ「石形」を持ってきていただいたんですけど、ぜひこれも積んでいただいて、競演させていただけませんか?
- 江雪
- いいですよ。即興なので、そんなに凝ったことはできないですけど。
……へぇ、これが作品ですか。面白いですね。
もし落としたら、割れちゃう可能性がありますけど、大丈夫ですか? - いしお
- 全然問題ないです!
- ── 編
- ……え?そう積みます!?
- いしお
- うわ、これ、すごい!インスタ映えしまくりますね!
- ── 編
- いやぁ、もともと立てて置ける位置でペイントしてあるから、素直に積めば案外簡単かなと想像していたのですが……。この積み方は予想を超えてきました!
- いしお
- しかも、アンバランスを演出しつつも、全部上下や正面は守ってあるところがすごいです!
イベントでこの遊び方提案したら、セットで3個売れるかも(笑)。 - 江雪
- この石、カクカクしているから、逆に角度の微調整が難しいですね。
- ── 編
- 普段の作品作りで、石の選び方にポイントはありますか?
- 江雪
-
- いかに「不安定」を演出するかが肝なんです。
- どこかに重心の線が通っているんですけど、石と石の接点を極力小さくして、接点が一直線に見えないよう、曲がりくねっているように見せます。
- トップの石をできるだけ大きくするのも、不安定感を演出しますね。
- 重心は頭で考えずに身体で感じて、積むんじゃなく立てる、というイメージです。
©. 石田意志雄
- 江雪
- やっぱり向いている石があるので、気に入った石はまた使ったりしますから、川原に集めて置いておくんです。誰もとっていかないし。
- いしお
- たしかに、他の人にどの石かなんて絶対わかんないですね(笑)
- 江雪
- 風があって積めない日は、石探しをしますね。
集めた石が増水で流れてがっかりすることもありますけど、そのときはそのときで、また新しい石に出会える楽しみがあります。
しかも、この長良川の中流の岐阜市がいいのは、鵜飼をやっているから、毎年、役所が川底をさらって石をひっくりかえしては雑草対策も兼ねて川原に積んでいくんですよ。だから、毎年新しい石に出会える。それに、渓流にはない、ちょうどいい大きさと形の石がいっぱい。都会でロックバランシングを楽しむ人たちは、わざわざ車で2時間かけて渓流に石を拾いにいって、家でやったりしているんですけど、ここではもう選び放題ですから贅沢ですよね。どんな石があるか覚えているので、絶対同じデザインにならないように、デザインのアイデアストックをノートにまとめているんです。
- いしお
- おおお!すごい!
- 江雪
- 作ったものはチェックしていくんです。
- ── 編
- 普段のお仕事に活きたりすることってありますか?
- 江雪
- いやぁ、それはないですけど。本業は一級建築士なんです。
- いしお
- なるほど!だからこの緻密な設計が!
- ── 編
- いしお先生は、ご自身をモデルにした石のキャラクター「いしお」を漫画にしていたから、石のペイントもやりはじめたんですか?いしお先生も、もともとグラフィックデザイナーでしたものね。
- いしお
- そう、キャラクターのグッズを作りたいなぁと思って。
僕は、百々ヶ峰の石しか使わないんです。
最近ブラタモリ岐阜編で話題になったチャート(※太古の海のプランクトンなどが堆積してできた固い岩石)ですよ。
家が山すそにあるんで、庭に勝手に落ちてくるんです。
単純そうに見えますけど、石と会話しながら(笑)作ってます。
やりたいデザインがあっても、石の形を見ているうちに違うものに見えてきて、「いしおにしよう」と思っていたけど招き猫になっていったり……石に聞くんですよねぇ。
触っていていい感じの石があっても、何度見てもピンとこない場合もあります。
だから、作らずにストックしてある石もいっぱいありますね。 - ── 編
- 江雪さんも、いい石だけどなかなかロックバランシングに使えない石ってありますか?
- 江雪
- うーん、向かない石はそもそも、目に飛び込んでこないんですよね。もう最初から、向く石だけを探しているから。
- いしお
- 最高でどれくらいの高さまで積んだことがありますか?
- 江雪
- 最高で肩くらいまでかな。普段は腰くらいまでの高さが多いです。
ただ、石は重いから、足に落ちてくるとホントに大けがをしてしまう危険もあります。
ずっと座って作っていると、知らぬ間に足がしびれていて、立ち上がるときによろめいてヒヤリとすることもありますよ。
©. 石田意志雄
- 江雪
- 倒すときも、これぐらいの高さでも膝に当たるとものすごく危ないので、自分と反対側に倒れるようにします。
- ── 編
- (そのとき風がふく)あ!倒れた!えっ?たしかにさっきより草がそよいでますけど、こんな微風で崩れるほどのぎりぎりの重心で立っていたんですね!!
- 江雪
- そうです、ぎりぎりなほうがいい作品なんです。
全部崩れるってことは、すべてでバランスをとってるってことです。
この無になるところがまたいいんですよね。積みなおしますか。
- いしお
- じゃあ、僕もやってみます!
……え、これ、さっきどうなってたんですか?かなり難しいぞ……!
- いしお
- できた!
- ── 編
- おお!……そして、すっごいうれしそう。
- いしお
- これね、重心きたときすっごいうれしい。ピターッ!ってとまるんですよ。
よし、長良川の石でもやってみよう。あー、これ、はまるなぁ。何時間でもやっていられますよ。
この、江雪さんがセレクト済みの石、すごいです。ここに反則級の絶妙なくぼみがあって、立てやすい!
- 江雪
- 日常で「何も考えない時間をとる」って案外難しいんですけど、座禅より簡単に瞑想ができて、長良川の自然を満喫できて、お金も収納スペースもいらない。
長良川ってロックバランシングに恵まれていますよ。
まぁでも、僕みたいに毎週末朝来てやる、みたいなもの好きはほかに見かけませんけどね(笑)。
- ── 編
- いしお先生は百々ヶ峰の石しか使わないのがこだわりとのことですけど、読者もまねできるように長良川の石と水でいしおちゃんを描いてみてもらえませんか?
- いしお
- いいですよ、こんな感じかな?
- いしお
- あーこれ、いくらでも作れますよ。いしお、すぐ描けますから。
- いしお
- エコな遊びですねー。無から有をつくりだすっていうね!
ロックバランシングと通じるところがありますね!
青年よ、石を抱け!
- ── 編
- こうして長く川べりにいることって、なかなかないですけれど、水音を聞いたり朝日を浴びたり、癒されますね。岐阜市民って、こんな場所が近くにあるのが恵まれているなと感じます。
- 江雪
- 上流でロックバランシングをやっている人たちは、熊とか猿とかでて危ないですからねぇ。夢中になっていると気づかないから。その点、この中流域は安全でいいですよ(笑)。
- いしお
- 平らな石もいっぱいありますしね。水切り遊びもできそうな。
- ── 編
- 見慣れた景色ですけど、この石が転がっている風景、ここならではのものだったんですね。長良川STORYっぽい対談でした!ありがとうございました!
- < 石花 江雪 / Ishihana Kousetsu >
- ロックバランシング アーティスト。岐阜市。
- 2016年6月からロックバランシングを開始し、翌7月からInstagramに掲載。日々長良川などでアーティスティックな作品を作り、写真におさめている。
- ※日本のロックバランシング愛好会「石花会」の愛好者はみな、アカウント名に「石花」をつけています。
- ▷ Instagram 石花 江雪(@skl5582)
- < 石田 意志雄/ Ishida Ishio >
- 漫画家、イラストレーター、エッセイスト。岐阜市。
- 2012年7月より毎日4コマ漫画を執筆。長編漫画『意志雄がゆく』をnoteで連載。これらをまとめた単行本『偉大なるいしお先生』が2巻まで出版されている。
- 石にペイントした「石形(いしぎょう)」もイベントなどで販売。
- ▷ Instagram 石田 意志雄(@ishidaishio)
- ▷ Note 長編連載「意志雄がゆく」
- ▷ Note コラム「漫画がダメならエッセイだ」
- ▷ 石田 意志雄 WEBサイト
※注意
ロックバランシングを楽しむ際には、自分や他人に石がぶつかってけがをしたり、水難事故にならないようにしてください。作ったあとは、安全のため必ず倒して帰るのがマナーです。