長良川の歴史を伝える郡上竿。
釣り竿職人・福手福雄さんの磨かれた技を見る
父から受け継いだ竿作り
郡上竿を見に郡上市美並町にある「福手釣竿製造所」を訪ねました。
この製造所の竿職人・福手福雄さんは、父・俵次さんを手伝い、19歳のときから竿を作り続けて60年以上になります。
アユ釣りにも詳しく漁舟を所有し、これまで友釣りや夜川網漁など、さまざまな漁法でたくさんのアユを捕まえてきたそうです。
竿作りは秋になると始まります。
- 完成までには、
- ・干して乾燥させたら、火であぶり曲がったところをまっすぐに直す。
- ・山林で材に使うシノダケやヤダケを選んで切り、皮をはいで表面をみがく。
- ・干して乾燥させたら、火であぶり曲がったところをまっすぐに直す。
- ・継ぎ目に真ちゅうの管を作ってはめる。
- ・フジや絹糸を巻いて装飾をほどこし、塗料のカシューをぬる、
- といった主な工程があります。
他にも細かな作業がいくつも連続し、また一つ一つの仕事を何度も重ね、
月日をかけて仕上げていきます。
福手さんに「火入れ」の作業を見せてもらいました
竹のある部分を熱源に近づけ、ぐるぐる回しながらゆっくりと、均一に熱を加えていきます。
十分に熱が通ったら、専用の道具でそのところにぐんと力を加えて、曲がった部分を矯正していきます。
福手さんの表情が、厳しい職人の顔つきへと一瞬で変わり、あたりの空気がぴんと張り詰めます。
作業場には、福手さんが作ったアユ釣り竿や渓流竿などが並んでいました。
アユ釣り竿より短い、4メートルくらいの渓流竿を持たせてもらいました。
穂先の感触が心地よく手に伝わってきて、身体と一体化したような、そんな感触を覚えました。
「竹は感度がいい。体に響いてくる。竹以上のものはない」と福手さんは語ります。
「自分がアユ釣りをしていて釣りやすい竿を作った」
長良川の魚、釣り方に合わせて作られ、改良が重ねられてきた郡上竿。
この一本に、どれだけの知恵と技がこめられているのでしょう。
じっと向き合っていると、一竿一竿がこちらに語りかけてくるようです。
福手さんの作業場には、歴史の年輪を感じさせる竿作りの道具がたくさんありました。
いつか長良川の魚たちを、この郡上竿で釣りあげてみたいと思いました。