〔前編〕「鮎の熟れ鮨」仕込み編
塩漬けした鮎の腹に、炊きたてのご飯を詰めて発酵させた「鮎の熟れ鮨(なれずし)」。
保存食として発展した珍味で、香りのよい鮎と発酵したご飯が、さわやかな味わいとなります。お酒との相性も抜群!
秋に捕れた脂身の少ない落ち鮎を使って、「鮎の熟れ鮨」を自宅で仕込んでみました。
秋、大量のオス鮎をどうするか
こんにちは。長良川の申し子・長良川おんぱくプロデューサーの蒲です。
お腹いっぱいに卵や白子を抱えて群れになってやってくる彼らを、文字通り一網打尽にする爽快な漁が「瀬張り網漁」です。
川底に敷かれた白いラインと、川面をはじくロープの波しぶき。
長良川の美しい景色ですね。
▷魚との知恵比べ。伝統漁法で落ちアユを捕る
ただこの瀬張り網漁にも問題があります。
『大量に獲れすぎた(あまり美味しくない)オス鮎どうする問題』です。
もちろん世の中には、子持ち鮎より白子の鮎が大好き!っていう人もいるんだと思いますが、私は一人しか会ったことがありません。
おそらくかつての長良川周辺の民も、私と同様、秋のオス鮎を持て余したはず。その結果生まれた(!?)食文化がこの「鮎の熟れ鮨」なのではないかと勝手に思っています。
(※長良川の鮎を徳川家への献上品とするための、長期発酵しない熟れ鮨もありましたが、ここではあくまで郷土食文化として)
あとで話を聞いてみると、逆に落ち鮎のオスじゃないと、脂が抜けきっておらず、美味しい熟れ鮨ができないんだそう。うまくできてますね!
鮎の熟れ鮨を作ってみた
長良川おんぱくでは実にたくさんのディープな長良川文化を体験できるわけですが、
かつて
長良川温泉・すぎ山旅館の森料理長による鮎の熟れ鮨作りの体験
や
鮎の名店、川原町泉屋さんの鮎発酵食体験
などを通して、私も熟れ鮨の作り方を学習しましたので、3年ほど前から個人的にチャレンジしています。
一方で、上記のすぎ山旅館、川原町泉屋さんを覗くと、わずかな宿泊施設と、6人の鵜匠のみが作り続け、伝承しているのがこの鮎の熟れ鮨。庶民にはもはや幻の味と言えるかもしれません。
現在漬け込み中の鮎熟れ鮨、私個人の挑戦の記録を報告します。
///// 鮎熟れ鮨の作り方 /////
材料:鮎(落ち鮎のオス)、塩、水、炊いたご飯、焼酎(消毒用)
道具:包丁、まな板、大きなタッパー、陰干し用の大きなざる、漬物樽、重石、竹皮
1下ごしらえ
白子は別途集めて、塩辛にしてみました。
2塩漬けにする
まず、鮎から水分を抜き、保存できる状態にするため、塩漬けにします。
鮎の層→塩の層→鮎の層→塩の層といった感じで塩漬けにしていきます。この写真をFacebookにアップしたら、名人の泉さんから「塩が足りない、もっと!」というコメントが入りましたので、もっと入れる必要がありそうです。
3一ヶ月以上待つ
実は塩漬けには、しばらく期間をあける必要があります。
ものぐさな私は、今年は夏越しをすると決めていたこともあり、3か月くらい塩漬け状態で置いておきました。
4塩抜きする。
正直どのくらい塩漬けされていて、どのくらい抜けばいいのか、私のレベルではまだわかりません。
5陰干しする
これも、どのくらい干せばベストかはわかりませんが、多少カピってきたかなというくらいに雨が降り始めたので慌てて取り込みました。
6ご飯を炊く
小さい漬物樽に100匹くらいつけ込むためにご飯を1.5升炊きました。
7鮎のお腹に炊きたてご飯を詰め込む
鮎の熟れ鮨作りは自分との戦い。
クックパッドにレシピが上がってない以上、自分なりの「ま、いっか」ラインを探さなくてはなりません。
ま、いっか。!ポイント!ご飯はアゴまで詰めましょう。
8樽につけ込む
なぜかは不明。
この洗い米を樽の底に敷きます。
その後、お腹にご飯の入った鮎の層→ご飯の層→お腹にご飯の入った鮎の層→ご飯の層→と漬け込んでいきます。
もっとかぶせて鮎が見えないようにします。
9竹皮を敷き、重石を載せ、水を入れ、蓋をする
後編の「熟れ鮨 解禁!」の回でお見せしたいと思います。
10発酵させる
この状態にして、嫌気性発酵を行い、数ヶ月待ちます。
発酵期間は、熟れ鮨の考え方や地域によって異なります。
少し生っぽさを残し、ご飯粒も形を残しています。
一方で、川原町泉屋さんの手法では、滋賀県の鮒鮨の製法を取り入れ、塩漬け期間、発酵期間それぞれを長く取り、「夏越し」をするため、深漬けになっています。今年私は、このやり方に挑戦しております。
現在 漬け込み9ヶ月たったうちの鮎熟れ鮨。果たしてうまくいっているのか!?
次回「熟れ鮨 解禁!」に続く。