夏がやってくると食べたくなるウナギ。この時期になると、養鰻場で出荷サイズにまで育てられた「新仔」と呼ばれるウナギが、蒲焼き店などで出回り始めます。やわらかくて脂ののったウナギが味わえるこの季節、暑さを乗り切るスタミナ源として、多くの人びとがウナギを求めます。
東海地方には、ウナギの町と呼ばれるところがいくつかありますが、刃物で知られる関市もその一つ。市内には、ウナギの食べられる店が約20あり、舌の肥えた客を相手にそれぞれが腕を競いあっています。なぜ関にウナギ料理を出す店が多いのか。市観光協会では、昔から刀匠たちが精をつけるために好んで食べたり、刃物の商売で客へのもてなしとして提供されたりしたから、という説をあげています。
暑さの厳しいとある日の昼、市内にある人気のウナギ専門店を訪れました。店の前はたくさんの人。炎天下のなか、外で炭焼きの匂いをかぎながら1時間ほど待って、ようやく店のなかに。運ばれてきた熱々のうな丼は、飴色をしたつやのある光沢を放ち輝いていました。まずは見た目を味わい、それからがぶりと一口。蒲焼きの表面はさくさくで、ふっくらした身を噛みしめると、香ばしさとともにウナギの旨みがじゅわっとあふれました。食べ始めたらもう止まりません。黙々と食べ続けるうちに、丼はあっという間に空になりました。
持てる技術を駆使し、そのときに出せる最高のものが、一杯の丼のなかに凝縮されている。店主が自信をもって出すうな丼は、どの店のものもきっと魅力的で、オンリーワンな味わいでしょう。職人が精魂をこめて焼いた貴重なウナギ。感謝して大切に味わいたいものです。