鮎グルメを世界へ発信!
達人が挑む、鮎の発酵料理
「スーパーで鮎が売られてる!」道産子であるわたくし淺野は、長良川流域の民と鮎との距離の近さに驚きを隠せませんでした。
塩焼き、甘露煮、魚田、刺身などなど、あの小さな鮎をただでさえ色々な方法で食べるのに、
(↑ 左から「せごし」「塩焼き」「甘露煮」 同じ鮎でも味わい方は様々)
岐阜市・川原町にある鮎塩焼きが大人気の鮎料理の名店「川原町泉屋」さんを覗いて
「鮎のリエット」「鮎ピザ」など
想像を超えるバリエーションにさらにびっくり。
聞けばこれらのオリジナルメニューの数々、あの幻の鮎グルメと深~いかかわりがあるんだとか。
なにそれ?おいしいの?そんな疑問もぶっとんでしまうような熱い開発秘話をご紹介します。
時の権力者達に愛された幻の鮎グルメ
「鮎の熟れずし」。
そもそも「なれずし」とは魚や肉を飯とともに熟成・発酵させた保存食。
古くから東アジアを中心にあらゆる土地でつくられ、ここ日本でも平安時代の記録の中にすでに登場しています。
滋賀の「鮒ずし」や福井の「へしこ」など同じ系統の郷土食のなかでも、
長良川の鮎の熟れずしは、塩漬けした鮎の腹の中にご飯を詰めて発酵させるという点が特徴的。
香りのよい鮎と発酵したご飯が絡み合って生み出すさわやかな酸味がたまらない珍味です。
かつて源頼朝が岐阜へ落ち延び、鵜匠に助けられた折に食べた味を忘れられず、
のちに鎌倉幕府へ定期的に献上させたとか、
かの織田信長が保護したとか。
いまでも岐阜市の町中に江戸幕府へお寿司を献上した道「御鮨街道」の名が残るなど、
長良川の鮎の熟れずしは時の権力者達を魅了した究極のグルメだったことがわかります。
とはいえ長い熟成期間を経た「なれずし」はクセが強く、
好き嫌いがはっきり分かれてしまうこともたしか。
保存技術や輸送技術の発達とともに「すし」の主流は
現代のわれわれが知る「握りずし」へとその姿を変え、
長良川の鮎の熟れずしも、
鵜飼の伝統を守る6つの鵜匠の家と
いくつかの宿泊施設や飲食店のみでつくられる
幻の料理となってしまいました。
▷長良川おんぱく2014・鮎のなれ鮨手作り体験と、天然鮎料理
「熟れずし」のその先へ 世界に馳せる思い
そんな幻の鮎グルメ「鮎の熟れずし」の可能性に意欲的に挑んでいるのが、「泉屋物産店」5代目社長の泉善七さん。
(↑ 炭火で40分かけて焼きあげる絶品の鮎の塩焼き。このためだけに県外から足を運ぶ人も!)
鮎の塩焼きが大人気の「川原町泉屋」の料理人でもある泉さんが、熟れずしを作り始めたのは約20年前。自分なりの「おいしい!」にこだわるあまり熟れずしそのものの歴史と向き合い、試行錯誤を重ね、いまでは熟れずしにとどまらない鮎発酵料理の可能性を極限まで広げた新商品を開発し好評を博しています。
熟成した熟れずしのお米を使った白熟クリーム、ピザなど想像の範疇を超えたメニューの数々!
「鮎は川のテロワール」と語るほど鮎そのものの味わいを深く追求した泉さんだからこそ、
一見突飛にみえる組み合わせを見事なグルメへと昇華できたのだと言えそうです。
観光庁主催の世界にも通用する「究極のお土産」に全747品から、「鮎のリエット・白熟クリーム」が9品中の1品に選ばれました。
「なんとかこの鮎で、世界中に発信できる食文化ができないかなと、常日ごろ思ってやっております」と語る泉さん。
「おいしい鮎を提供したい」という一心で、国内だけでなく遠く東南アジアまで飛び回り、
思い立ったら数年かけてでも検証と開発をおこなうその姿勢には頭が下がります!
漁師の平工さんと対談したイベント「大人の夜学」では、
半端じゃないこだわりがにじむ、知られざる開発ストーリーがポンポン飛び出しました。
対談の全容が下記リンクから読めます。「へぇー!」がいっぱいですよ。