神様は、ワイルドがお好き?それともマニアック?
神様に捧げる真面目で珍妙なお祭り

 祭好きとは言うものの、はっぴや神輿は似合わない。どうも淺野ヘブンです。
春は桜まつり、夏は夏祭りに盆踊り、秋には紅葉祭りがあって、
最近じゃあ冬は地酒祭り……なんて
世の中にはたくさんの「祭り」があふれていますね。

 今回は数あるお祭りの中でも、
ちょっと不思議な?「奇祭」といわれるお祭りを紹介しながら
長良川の恵みについて考えを巡らせていきます。

 

1寒空の下、ふんどし姿で川へ……

「池ノ上みそぎ祭」(岐阜市池ノ上町)

開催日時:12月第二土曜日
開催場所:忠節橋より500m下流/長良川右岸

 寒風吹きすさぶ12月の第二土曜日に
ふんどし姿の男たちが忠節橋の約500m下流、長良川右岸からへ川へ入ります。
(みそぎ)の女神「瀬織津姫(せおりつひめ)」を祀っていた形跡のある
葛県神社(かつらがけじんじゃ)の祭祀で、
旧暦10月(神無月)の晦日(みそか)、心身新たに神を迎えるために始まったとされています。

「こんな寒い時期になんと酔狂(すいきょう)なことを……」と、いうのはぬくぬくと育った現代人の感覚。
かつて人々は、たびたび飢饉や洪水など自然災害に翻弄されてきました。
稲の刈り入れのある旧暦10月におこなわれたこのみそぎ祭に、
五穀豊穣や地域の安らぎに対して特別な思いを込めたのかもしれません。

 

2音と光の感動!?

「チンチカカ」(関市小屋名)

開催日時:8月15日
開催場所:関市小屋名 津保川河畔

 8月初旬、関へ向かう道すがら見つけた「チンチカカ」ののぼり。
どんな催しなのか想像すらつかない「チンチカカ」という言葉に、「音と光の感動」なんてアミューズメントパーク顔負けの文句がついていたら、
否が応でも興味をそそりますよね?

 その正体は毎年8月15日、津保川の河岸に巨大なたいまつを焚き、鳴り物をならして祖先の霊を送る、関市小屋名の精霊送り。
鳴り物の「チンチンカンカン」という音が転じて、「チンチカカ」になったともいわれています。

 

3素朴さが味わい深い

大矢田(おやだ)のひんここ」(美濃市大矢田)

開催日時:4月第二土曜日/11月23日
開催場所:大矢田神社

大矢田(おやだ)のひんここ」をひとことで形容するなら「ゆるい人形劇」。
大矢田(おやだ)神社の祭礼の日、境内の一段高い場所で
手作りの人形を使い、
スサノオノミコトの悪竜退治や
クシナダヒメと蛇との戦いなどの人形劇が演じられます。

 ちなみに「ひんここ」という呼称は
劇中で交わされる「ヒンココ チャイイココ チャイチャイホーイ」というお囃子(はやし)からきているそう。

 実は室町時代から続く長い歴史を持つこのお祭り。
手作り感あふれる人形と、味わい深いお囃子に、
かつての素朴な信仰の姿が色濃く残されていますね。

 

4意外に頭脳戦

六日祭(むいかまつり)花奪(はなば)い祭り)」(郡上市白鳥町長滝)

開催日時:1月6日
開催場所:長滝白山神社

 毎年1月6日、長滝白山神社で「長滝の延年(えんねん)」が執り行われます。
「延年」とは寿命を延ばすことを意味する、おめでたい言葉。
粛々と進む延年の舞の途中で、にわかに様相が変わります。

 高さ6mの拝殿天井に吊るされた5つの大きな花笠を目指し、
人のはしごが組まれ、上に下にともみ合いながら
花笠の奪いあいが始まることから
「花奪い祭り」とも呼ばれています。

 花奪いには一般参加も可能。持ち帰ると豊蚕、豊作、家内安全、商売繁盛など、
沢山のご利益があるといわれるこの花を、奪いとりにいってはいかがでしょうか?

 


激しく、不思議で、味わい深い

 「祭り」とは本来「祀り」であり、その地に住まうと考えられた神々を文字通り「祀り」、
豊かさや安寧を祈願するものでした。

 おだやかに流れる川、急峻な渓谷、時には洪水で家や田畑を飲み込む暴れ川のように、
ひとつの川でもあらゆる表情を持っています。
 起伏に富んだ環境に、様々な神様がいると考え、色々な祀り方をする。
これは、自然の力に強く影響されながら暮らしてきたかつての人々にとって、
至極当然のことかもしれません。

 そんな優しい神や荒ぶる神への畏れと向き合いながら、
人々は多様な生活を営んできました。

 つまり一見「奇妙である」ということは
すなわち「豊かである」と言い換えることもできそうです。

 長良川流域にはまだまだたくさんの魅力的なお祭りがあります。
様々な地区の様々なお祭りに参加することで、
長良川が育む恵みの豊かさや、懐の深さを味わってみてください!