インタビュー
女性竹かご職人の結婚式には、
暮らしに竹の雑貨を取り入れる
おしゃれなヒントがいっぱい
新緑がみずみずしい4月の週末、竹かご職人・安藤千寿香さんの結婚パーティが、美濃市で開かれました。
竹をふんだんに使った演出は、普段の暮らしやホームパーティーに取り入れたい素敵な発想が盛りだくさん。
従来の「民芸」「伝統工芸」のイメージを覆す新鮮なアイデアを、安藤さんご本人から詳しく伺いました。
1. 竹かごのブーケバッグは、自転車かごにも使える!
新郎新婦の登場。美濃市の古い町並みにある会場まで、人々に見守られながら新郎の大好きな自転車で。
花で彩られた自転車の前かごは、実は竹のかごバック。自転車に紐で固定しただけなので、パッと取り外して、入退場ではウエディングブーケがわりに新婦が持って歩きました。
このブーケなら、会場にそのまま置いても絵になりますね。
日常での買い物にも、大活躍しそうなアイデアです。
2. テーブルの花かごは、持ち帰れば使い方いろいろ
各テーブルを華やかに彩る、伝統的な四海波(しかいなみ)のコロンとした花かご。
生け花では中にもう一つ花器を重ね、投げ入れにすることが多いのですが、今回のような洋風アレンジに使うと、爽やかな雰囲気が演出できますね。会場装飾や花嫁の髪飾り・ブーケの花はすべて「野の花」をイメージした黄・緑・白の3色で統一されており、竹の色によくあいます。
各テーブルごとに置かれた花かごは、ゲストがお持ち帰りOK。このかごなら、家でも使えます。(普通なら遠慮しあうシーンのところですが、これは争奪戦になっちゃいそう!)
安藤さんはこの花かごを、ご自宅でにんにくを入れるのに活用しているそう。
紐で吊るして、ハンギングプランターにしても素敵かも。
※フラワーアレンジメント by
美濃市「花やぎ」
(花かご・ウェディングブーケ
・髪飾りなど含む)
3. 竹のおにぎりかごには、鯛めしを盛り付けて
通常はおにぎりを入れて、2つ合わせてハンカチで包むと、お弁当に持っていけるかごです。
今回はケータリング作家「ネシアン」さんのフードコーディネートで、青笹を敷き、鯛めしを入れています。
竹と青笹がごはんの水分を適度に逃すので、ごはんがべちゃっとならなさそうです。
(普段おにぎり入れとして使うときも、冷ましてからラップで包むとよいそう)
上に飾られた木の芽や花が、華やかさを増しています。
三角の食器はありそうでなく、角も優しい形なので、テーブル上にリズムを生んでくれますね。
今回はゲストの人数分を用意し、食べ終わったかごをお持ち帰りギフトにしたそうです。
商品を知っていたゲストも多く、とても喜ばれたとか。
※フードケータリング by
「ネシアン」
4. 時とともに深みを増す、竹のマリッジリング
ゲストもびっくり!?竹細工作家ならではの、竹の結婚指輪。
竹って指輪にもなっちゃうの!?と、驚きの声が聞こえてきそう。
桶(おけ)のたがに使う編み方を小さくしたもので、一本の竹でできており、端部が指に当たって痛くならないように始末してあります。
結婚指輪は「永遠に変わらない愛」の象徴によく挙げられますが、
時とともに艶のある飴色に変化するリングも、それはそれで素敵です。
「私も作ってみたい!」という方、サイズも自由自在なので、安藤さんにご相談してみては?
5. 中部伝統の菓子まきも、大きな鵜かごを使えば盛り上がる!
菓子まきに使われていた鵜かご(うかご。水鳥の鵜(う)を入れて持ち運ぶための、大きなかご)。
段ボールからお菓子を出すより写真映えがして、会場の古民家の雰囲気ともあっていますね。
岐阜市・長良川鵜飼と関市・小瀬鵜飼で使用する鵜かごを作る職人は、一時期途絶えてしまうところでした。安藤さんは鵜籠づくりの後継者のひとりとして、竹を採りに行くところから取り組んでいます。
「伝統的に使われ続け、今も必要とされているのであれば、その需要に応えていきたい。そうでないと伝統の景色が無くなってしまうから」と語る安藤さん。
長良川デパートでは、閉じた和傘を飾るのに使っています。かなりの存在感を放つ大きなかごも、アイデア次第でいろいろなことができます。
「ゲストには、とにかく気楽に、
ピクニックのように楽しんでほしい」
という新婦の思いをかなえた、
ナチュラルな竹の魅力
↑ワークショップで制作した竹テントを、高砂席にアレンジ
自分らしく、自然な優しい雰囲気でゲストをもてなしたかった安藤さん。
竹細工を使うイメージは持っていたものの、
「プランナー・ケータリング・花などのプロの方々に竹細工を託せる、またとない機会だと思ったんです。
少し下心があったかも…(笑)」といいます。
ゲストと新郎新婦の当日の楽しさが写真から伝わってきます。
── 最後に、安藤さんが思う「竹の魅力」を聞きました。
『竹には、自然素材や手づくりのモノとしての良さがあります。
良いものは愛着が湧く。
竹細工は高価ですし、手入れに気を遣う分、
大切に扱えば生活のゆとりになります。
実用的な上に、
「眺めていたくなる」
「人に見せたくなる」
「ごはんが美味しく感じる」
などの良さがありますよ。
私が竹細工を作るときに心掛けているいることは、
全ての工程を大切にすること。
どこかで「まあ、いいか」と流すと、
その後の工程で必ず影響が出て、やり直すはめになります。
自分の手を加えることで、本来の竹の良さが減らないように、
気をつけています』
* * *
手しごとが生み出す竹細工。暮らしに取り入れることで得られる変化を、
皆様も体感してみてはいかがでしょうか。