「野生の起業家」インタビュー 関②

〝グローカル〟な視点で関の刃物を世界へ、そして次世代へ

刃物問屋代表/岐阜県関市

吉田 和弘(よしだ かずひろ) さん

やりたいことには、どんどんチャレンジ!

ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並び世界三大刃物産地に数えられる岐阜県関市。そんな関市を代表する刃物問屋「刃物屋三秀」は、1938年に開業して以来、刃物の販売を中心にした事業を時代にあわせて展開してきました。その3代目代表を務めるのは吉田和弘さんです。吉田さんは東京で大学に進学後、広告代理店の営業担当としてのキャリアを10年ほど重ねていましたが、2代目である両親の年齢も気になり、家業を継ぐ形で関市に戻ってきました。

しかし、いざ吉田さんが継承者となると「ただ家業を継ぐだけでは、ずるずると時だけが流れてしまう」と、伝統を次の世代へつないでいくにあたっての課題も感じるようになりました。そこで吉田さんは、ともすると消えてしまいそうな関の刃物文化について「何を新しくし、どうつなげていくか」を、3代目代表としてひたすらに追求し続けていくことにしました。

そこで、日本国内に限らず広い認知を獲得するべく、世界に目を向けることにした吉田さんは、ニューヨークで初めての関刃物PRを実施しました。日本の伝統文化や高い技術が光る刃物には海外の方々からの反響も大きく、PRは大成功。その後には、2005年に控える愛知万博開催をチャンスとして捉え、アジア諸国を中心にした海外誘致にも乗り出しました。インドネシア、ジャカルタ、台湾などいくつものアジア諸国を巡る中で、各地で関の刃物に対する認知を獲得。広告代理店時代に身につけた営業力も武器にしつつ、吉田さん自らが世界各国を飛び回ることで、関の刃物のもつ魅力を世界にも広めることができました。

また、世界だけでなく、日本国内にもその魅力を伝えていく必要があると考えた吉田さんは、2008年には観光客や子どもたちが刃物により親しめるよう「関刃物ミュージアム」を自己出資で設立しました。

注目すべきは、身近に関わることが難しかった刃物職人が、目の前で刃鍛冶を行う様子を見学できたり、一般人には早々体験できない刃物作りに挑戦できたりと、かつては考えられなかった体験ができるという点です。これによって、地域の人を含めてどこか遠い存在でもあった関の刃物をより身近に、そして国内外問わずより多くの人々が関の刃物の存在を知ることができるようになりました。

さらに、施設への入館料は無料です。ここには、「今ある文化をとにかく次世代につないでいくためには、まずは多くの人がそこに興味をもてるきっかけが必要だ」という吉田さんの強い想いが表れています。関ならではの刃物文化を未来につなぐために、吉田さんは目先の利益にとらわれず、常に未来志向で行動し続けているのです。

現在でも吉田さんは、アジアをはじめとする海外諸国を飛び回ったり、ときには華麗に刃物を扱う居合を披露したりしながら、関の刃物の存在を広め続けています。

世界へのグローバルな視点、そして地域へのローカルな視点を掛け合わせた“グローカル”な視点で、吉田さんは今日も関ならではの刃物の魅力を伝えるべく東奔西走します。

学習者の皆さんへ

「やりたいことには、失敗を恐れずどんどんチャレンジを!」

文化を次世代につないでいくために、現状を見つめ直したことで「このままではだめだ」と、前例のないことにも恐れず果敢に挑んできた吉田さん。これまでの行動から、失敗を恐れずにまずは挑戦してみることの大切さを身をもって体感してきました。

まずは自分自身が動いてみることで、初めてわかることや次にやるべきことが見えてくる。

そうしてどんどんチャレンジを続ければ、その先に必ずしも良い結果や成果があるとは限らないものの、新しい発見や次なる挑戦への準備につながるはずです。

また、「時代や環境は目まぐるしく変わっていくからこそ、世界に目を向け、様々な人と交流することも大切」と強く語る吉田さん。海を越えて様々な人と交流をしたことで、自分だけでなく日本の文化の可能性を広げてきた吉田さんだからこそ、若いうちから広く世界に目を向けることの大切さを実感しているのです。

もし今、やりたいと考えていることや未来に向けて達成したいことが一つでもあるなら、世界へ目を向けつつ、まずは一歩を踏み出すことから始めてみてはいかがでしょうか。

〈 関連リンク集 〉

■『刃物屋三秀/関刃物ミュージアム』公式サイト
https://www.hamonoyasan.com/

■『世界も認める「刃物のまち」岐阜県関市』
EXSENSES|エクセンス ライフスタイルを彩るウェブマガジン
https://exsenses.jp/toukai-hokuriku/post-12661/