「野生の起業家」インタビュー 美濃②

和紙を糸に加工して新世界へ。老舗からの船出

美濃和紙卸問屋 店主/岐阜県美濃市

松久 恭子(まつひさ きょうこ) さん

まずは色々なことに触れてみて

美濃市、“うだつの上がる町並み”に店舗を構える「松久永助紙店」。
明治9年の創業以来、地域の方からも厚い信頼を得ながら愛され続ける和紙卸問屋で、5代目の店主を務めるのは松久恭子さん。
岐阜市で生まれ育った松久さんは、もともとは京都でメーカーに勤めていましたが、長い歴史のある松久永助紙店を守っていくために、家業を継ぐ形で美濃市へ移住します。

その先で松久さんが着目したのは、美濃和紙でつくる「紙糸」です。
紙糸は、成熟したマニラ麻の葉脈部分の繊維をパルプ化し、日本独自の抄紙機にて作られた強い原紙にスリットをかけて出来上がるものです。

紙糸は、原料が紙であるという点で、一般的に糸として用いられる綿糸と比較すると、吸水性・放湿性に大変優れています。そのため、靴下やタオルなどに最適な素材といえます。
また、生物の作用により分解する性質をももっているため、環境にも優しいものです。

従来、和紙卸問屋として親しまれてきた松久永助紙店では、お客さんの要望によってさまざまな和紙を扱ってきました。花火屋さんからは花火を包む紙を頼まれたり、壁紙に和紙を使いたいと依頼がきたり。

そんな歴史あるお店を継いでいくにあたり、松久さんは改めて「紙糸」の有用性を生かし、靴下やタオルをはじめとするさまざまな商品の企画・開発に注力したのです。

今や有名アパレルブランドとのコラボレーションも実現しており、そのデザイン性や機能性から、根強いファンがいるほどになった松久永助紙店の商品の数々。美濃和紙糸を使ったオリジナリティ溢れるアイテムは、今や松久永助紙店の看板商品となっています。

糸のその先、加工は無限大の可能性があり、お客さんのやりたいことを紙で実現するという松久さん、そして松久永助紙店を継いできた先代の想いにも合致しています。
そしてその想いが、一つ一つの商品にも表れています。

「大切な伝統工芸である美濃和紙をより魅力的に伝えていくには?」

現状に満足せず、美濃和紙の魅力をより多くの人へ伝えていこうと、松久さんは日々和紙の新たな価値を創出し続けています。

学習者の皆さんへ

「いろいろなものに触れること」。

少しでも興味や関心を持ったことに対しては、まず触れてみることを松久さん自身も大切にしてきました。

「いろいろなものに触れることで、何かしら吸収することがありますよね。それがどこかで生きてたりもしますし、何よりその方が楽しいですよね」

ぶれていてもいい。一貫していなくてもいい。
まずは先入観や固定観念にとらわれず、一度自分の想いに素直に、色々なものに触れてみると、新しい発見につながっていくのではないでしょうか。

〈 関連リンク集 〉

■「松久永助紙店」公式サイト
https://www.kumojyo.co.jp/index.html

■紙糸とは何か
「松久永助紙店」公式サイト
https://www.kumojyo.co.jp/kamiito/index.html