「野生の起業家」インタビュー 岐阜②

「開いて花、閉じて竹」。美しい岐阜和傘を全国に広めた火付け役

岐阜和傘職人/岐阜県岐阜市

河合 幹子(かわい みきこ) さん

岐阜市の伝統工芸品として名高い岐阜和傘。岐阜は日本の和傘生産シェア1位を誇る和傘の名産地でもあります。職人の手によって一本一本丁寧に作られる岐阜和傘は、「開いて花、閉じて竹」と表されるその美しさが大きな特徴です。

和傘問屋の家系に生まれた河合幹子さんは大学卒業後、一般企業や税理士事務所での勤務をしていましたが、叔父から手伝いを頼まれたことをきっかけに、地元岐阜へ戻ることにしました。

河合さん自身も和傘には小さい頃から馴染みがあり、今後どこかで和傘に携わっていくという漠然とした想いもあったため、声掛けには迷いなく応じたと言います。

その後、本格的に和傘業界へと参入していった河合さんは、和傘の製造から販売までを手がける「仐日和」を立ち上げました。職人になりたての頃は新聞配達をしながら、空いている時間は職人として制作に打ち込む日々。「何事もコツコツが大切」と語る河合さんは、工程一つ一つに手のかかる和傘づくりにも精力的に向き合い続けました。

また、岐阜の大切な伝統工芸である和傘ですが、それを担う和傘職人の高齢化も相まった担い手の減少は大きな課題といえましょう。和傘作りに興味はあるという方もいるようですが、和傘そのものの華やかさと、完成までの作業における地道さのギャップには戸惑いを感じる人も少なくありません。
傘の骨を作る人、紙を張る人、仕上げの油や漆を塗る人というように、いくつもの工程をそれぞれの職人が分担して作る分業制を取るのが岐阜和傘特有の製法です。一本の傘が仕上がるまでには、数週間から数カ月という長い期間と、高度で繊細な技術が求められます。
職人が減ってしまっている昨今の状況下では、分業自体も困難であると感じた河合さんは、一人で和傘を完成させる技術を身につけようと、日々努力を重ねていきました。

そんな日々の積み重ねが実り、今では貴重な和傘職人となった河合さん。
河合さんの手がける和傘は、どれもオリジナリティあふれる華やかなデザインとなっており、広く人気があります。中でも明治期に作られた傘に着想を得たという「桜和傘」は、開くと桜の花びらのようになるデザインが特徴的で、岐阜和傘の認知拡大にも貢献しました。

「お客様が自分の手がけた和傘を手にしている姿や、完成した和傘が良い出来だったりすることはやりがいを感じる」という河合さん。

和傘づくりには、天候にも左右されやすく、繊細で、常に手間暇をかけて丁寧に作り上げなくてはならない大変さがつきまといます。それでも、開いた和傘の内側から見える景色をより多くの人に知ってほしいー。
そんな想いを胸に河合さんは、岐阜市を代表する和傘職人の一人として、岐阜和傘という大切な伝統を後世に伝えていこうと今日も和傘に向き合い続けます。

学習者の皆さんへ

「正解の道を選ぶんじゃなくて、選んだ道を正解にしていくのが人生」。

失敗したり、うまくいかなかったりしても、また別の道を何度も選んでいけるー。

河合さん自身も一度、受験に失敗して第二志望の学校に進んだという過去があるといいます。しかし、その中でも資格を取得し、その結果税理士事務所で働くという経験につながったことが、現在も仐日和を経営していくうえでも役に立っているといいます。あの時、別の道に行ったことが、思わぬ形で今のキャリアにもつながっていたのでした。

人生では何度も選択の局面が訪れます。その都度、その選択が人生のすべてを決めてしまうというような気さえしてくるものですが、実際のところそうとは限りません。いくらでも、他の道があったり、思わぬ方向に進んだことが後々の自分に新たな機会を与えてくれたりします。

「どちらが正解かどうかで悩むのではなく、自分がどちらに進みたいかどうかで考えてみてほしい」という河合さん。「選んだ道を正解にしていく」という気概をもって、恐れずに自分の進みたい方向に進んでみてはいかがでしょうか。

〈 関連リンク集 〉

■『仐日和(かさびより)』公式サイト
http://kasabiyori.com/

■「岐阜和傘と職人」
和傘CASA
https://wagasa.shop/pages/gifu-wagasa